2021年9月25日土曜日

お彼岸になると、志願理由書を読むことがふえます。

  季節はめぐって、気づけば、お彼岸。それでふっと、夏目漱石の『彼岸過迄(すぎまで)』を手に取って読み始めたら「・・・今の世に無暗(むやみ)に新しがってるいるものは三越呉服店とヤンキーとそれから・・・」とあって驚きました。これ、明治45年(1912年)朝日新聞の連載小説ですよ。「ヤンキー」なんてアメリカ人をちゃかした言葉が、もう使われていたんだ、なあんて感心しながらついつい読み進めてしまいました。はや、読書の秋なのでしょうか。

 そういえば今月は、ある女子生徒にしつこく薦められて、辻村深月の『かがみの孤城』(2017年)を読まされたばかりでした。不登校の7(8)人の登場人物を、グリム童話の世界に重ね合わせたなかなかの佳作、いや、傑作と言わないと怒られるか。読了後、いかなオヤジでも、10代の頃の人との距離感がつかめないあの不安定で孤独な、それでいて仲の良い友人を求めて揺れる心持ちを、思い出さずにはいられませんでした。うーん、そうだった、そんな思いを胸に秘めながら、時に作り笑いをしたり時に心から笑ったり時には怒りをぶつけたり泣いたりして、毎日生活していたのだったっけ。そして、いつも、いやな「勉強」がついて回る!   そうだ、がんばれ中高生!!とか何とか思いつつ、今日も今日とて「すずめのガッコの先生はムチを振り振りチーパッパ」とムチを振りかざしているのでありました。

 そのムチをよけながら「書いてみたんですけど、見てくれますか?」・・・この時期になると志願理由書の下書きが弱弱しく差し出されます。「どれ」、一読、「こんなありきたりの文章で採点官のこころが動くかあああッ」と説教しばし。で、過去の作文例なども見せながら様々な意見をします。生徒の言い分も聞きます。そのうえで、書き直し。書き直しては説教と意見交換、書き直しては説教と意見交換が、3、4回、4、5回も続くでしょうか、なんとか、ほぼ、完成稿に至ります。大変だろうな。

 けれども赤の他人に自分の思いをうまく伝えるのは、しかも筋道が通っていて相手を納得させ、人柄を伝えて相手に興味を抱かせる文章をものにするのは、大変な作業に決まってます。安易に妥協してはいけません。合格したい当人の思いをきちんとした言葉になるまで引き出し、採点官に「ほう!」と思わせる文章ができるまで格闘は続くのでありました・・・理想のハナシです・・・・・ ン? 塾長! これはボツにしないでください。お願いします、才能も内容も無いので、これ以上書けません。ちょこっと直すだけでUpして下さい。(※ このブログは、私がチェックしてから公開することになっています by塾長)

 

 このところ、大学受験生が4~5人いる講座を開いてます。問題を配って私はいったん退席し、頃合いを見計らって教室に戻ります。すると・・・とくにこの頃は・・・問題を解き終わって、生徒同士が教え合っている、なごやかな光景に、出くわす事が多くなりました。

「あのおおおー、ご歓談中のところでは御座いますが、解説してもよろしいでしょうか?」

 ― 突然、みんな、こちらを振り向いて、

「えッッ。ああ。いいですよおー。あははははは、もう、わかっちゃいましたけど、聞いてあげます。」

「・・・・・・・・・・・・・・」